先般、東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展で、ユニフォーム類の企画販売を手がけるメーカーのユニコ(UNICO)が出展し、「プロテクト介護機能衣料」を提案していました。これは、転倒で起こり得る骨折などの発生を低減・軽減することで二次的問題を予防することを目的とした、新しい発想の「倒時衝撃軽減服」です。
デザインを手掛けたのは、小林由則さん。大手アパレルでパターンやデザインに従事し、中国企業のディレクターを務めた後、帰国して介護資格を取得。現在、介護の現場で介護機能衣料の研究開発を行っているそうです。企画構想4年、介護現場4年、サンプル開発2年を費やし、今回初出展したといいます。
介護機能衣料といっても、見た目は普通のジャージ上下、つまりスウェット(トレーニングウェアともいう)です。生地は綿/ポリエステル混。 ですから普段着として、いつでもどこでも昼夜を問わず、また男女両用で着用することができます。東日本大震災の際、被災された方々にとってもっとも重宝した服は、ジャージだったという話を伺ったことを思い出しました。
プロテクトとあるのは、保護機能のあるパッド(左写真)が、肩や肘、膝、でん部、大腿骨部に縫い込まれているからです。これにはバイクなどのモータースポーツで使用されている保護ウェアのノウハウが取り入れられているそうです。シンプルで格好良く仕上がっているのは、この手法にあるようです。
パッドは低反発性のあるウレタンのような素材でパンチング(穴あき)されていてしなやか、もちろん家庭で洗濯可能です。その衝撃吸収力については、伊藤忠ファッションシステム繊維技術室の落下衝撃試験で確認されており、現在特許出願中といいます。
超高齢社会となり、思わぬ転倒で高齢者の約1割が骨折するというデータも出ています。大腿骨骨折で寝たきり----というのも他人ごとではなくなりました。 この「プロテクト介護機能衣料」は、骨折を防ぐ必要最低限の保護を実現するもの。しかもスマートに見えます。誰もが「あったらいいな」と思うような服になるに違いありません。
今回、出展して高評価が得られたという小林さん。今後の商品化や販路開拓への取り組みを期待しています。
2018年12月31日
国際福祉機器展 骨折を防ぐ「プロテクト介護機能衣料」
転倒による怪我から身を守るスマートなウェア
主任研究員 柳原美紗子