一般社団法人 湘南くらしのUD商品研究室
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2018年08月05日
 
スマートウェア「e-skin」セミナー&体験イベントに参加
人体をセンサーする機能を備えた着心地のよいスマートアパレル

主任研究員 柳原美紗子

 スマートウェアとは、身に着ける電子端末装置といわれるウェアラブルデバイスの中で、衣服型のものを指します。その一つ、「e-skin(イースキン)」は、センサーをセットした着心地のよいスマートアパレルです。
 
 このe-skinの製品化・事業化を目指す東大発ベンチャー(株)Xenoma(ゼノマ) Co-Founder & 代表取締役CEO網盛一郎氏によるセミナー&体験イベントが、先般繊研新聞社にて行われ、参加しました。素材イノベーターと未来を語る」をテーマに、起業に至る経緯やe-skinの可能性、将来のビジョンについて語られ、私も実際にe-skinシャツを体感させていただきました。

 これがいかに優れているかというと、まずは伸縮性があって、布のような柔らかい肌触り、しかも耐久性があり、100回以上もの洗濯に耐えられることだそう。 まさにファブリックそのものの質感を備えているのです。伸縮性のあるワイヤーとセンサーを一般的な繊維(綿繊維もOK)に組み込める技術を有していて、布の風合いを壊すことなく、電子回路基板、つまりPCF(Printed Circuit Fabricプリンテッド・サーキット・ファブリック)をつくることができるといいます。普通の布に伸縮性の配線やセンサーを形成した新しい電子回路基板をつくれる画期的な技術なのです。
 従来の金属や樹脂製のデバイスですと、装着感が強く長時間の測定に向かなかったり、測定位置が限られたりしますが、e-skinはある種のウレタン化合物?らしく、このネックを解消、第3世代のスマートテキスタイルと呼ばれるといいます。ちなみに第1世代はヒーターが衣服に付いているようなタイプのもの、第2世代は銀など金属使いの導電繊維のものを言うそうです。

 人体をセンシングする機能を備えたこのスマートウェア。スポーツでは運動フォームの解析に、またゲームでは全身の動きでキャラクターを操作するなど、幅広い用途での展開が可能であるとのこと。2016年にはe-skin Developer's Kitを発売し、2017年にスポーツ分野を中心に国内外で約100着を販売したとか。このe-skin Developer's Kit は、14個の歪みセンサーを装着した「e-skin シャツ」、加速度・ジャイロセンサー等を搭載し、e-skinシャツのデータをスマートフォンなどに送信するコントローラー「e-skin ハブ」、アプリの開発者向けのソフトウエア開発キットから構成されるものだそう。価格は約6万円。
 ドイツのエッセン大学に「e-skinパジャマ」を提供し、パーキンソン病や認知症患者の歩き方を捉える実証実験にも使われる予定もあるとのこと。心電等の生体情報の取得など、機能を拡張し、赤ちゃんやお年寄りの見守りから、工場での安全管理の実証にも取り組んでいて、将来的に予防医療への応用も目指すといいます。東京マラソンなど身近なところでも活用できるようになるといいなと思いました。
 なおXenomaは、今年1月に開催された世界最大の米国家電見本市CESにe-skinを出展して、優秀賞を受賞。この5月中旬には、豊島との業務提携も発表されました。量産体制が徐々に整いつつある様子です。
 ちなみに社名のXenoma(ゼノマ)は、希ガス元素のキセノン(Xe)とマシーンの造語だそう。「変わった人と機械のインターフェイス」を意図して名付けられたとか。
 人の暮らしを豊かに楽しくする機械に取組むXenoma、その大きな可能性に期待しています。

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