増え続ける高齢者ドライバー
社会全体の交通死傷事故件数は年々減少していますが、人口の高齢化とともに、該当者のうち65歳以上のシニアが占める割合は増えつつあります。高速道路の逆走行、暴走運転等、高齢者の動作・判断能力の衰えに起因すると思われる悲惨な事故の
ニュースを耳にしますが、高齢者の運転免許保有率は若年層よりもむしろ高く、また、日常の足としてクルマを手放すわけにはいかないシニアも多くいるという現状があります。昨今、IT企業と自動車メーカーが自動運転技術の開発にしのぎを削って
いますが、シニア世代にとっては高齢者向けの「運転支援技術」が大きな関心となるでしょう。
踏み違い防止装置
ブレーキを踏んだつもりで右隣のアクセルをうっかり踏んでしまい、予想外の動きパニックに陥り、さらにアクセルを
踏み込んで重大な事故に至るケースを防いでくれます。ペダルを踏み間違えてしまったとき、危険を感知すると画面や音で
警告を発し、同時に加速を抑えます。さらに衝突の危険がある場合は自動ブレーキが作動します。
<搭載車例:ノート、 エルグランド、 セレナ(すべてニッサン)など>
衝突自動防止装置
メーカーにより名称、機能は異なりますが、障害物や人を察知して衝突を避ける「自動ブレーキ」システムが、ベンツなどの
高級車からコンパクトカーまで、幅広く採用されています。
<搭載車例:フィット(ホンダ) ヴィッツ(トヨタ) ムーブ(タイハツ) スカイライン(ニッサン) V40(ボルボ)など>
運転支援システム「アイサイト」
上記の「飛び出さない」「ぶつからない」技術に加え、「はみださない」(ふらつき運転防止)、「注意してくれる」(不注意運転防止)、「ついていく」(低速時でも高速時でも先行車に自動追従走行)技術を、より高度に実現させているのが、
GOOD DESIGN AWARD 2015でグッドデザイン金賞を受賞した、2008年の登場以来進化し続けているスバルの運転支援
システム「アイサイト」です。天井前方に搭載された、他社の多くが採用しているレーダーよりも高性能なステレオカメラが、
人間の目のように車の周辺の環境を感知し、障害物、人、自転車、クルマを識別、さらにそれらが動くスピードを認識して
適格に事故を防ぎます。
「高齢者にやさしい車」への取り組み
35道府県知事からなる「高齢者にやさしい自動車開発推進知事連合」が平成21年に結成されました。「高齢者にやさしい」
を軸にして、新しいコンセプトカーを自動車メーカーに提案し実用化させること、ITS(高度道路情報システム)などの
道路インフラの革新と一体となった未来カーの提案すること、の2つを目標に、国際的にも一歩リードした活動を続けて
います。上記の最新技術は高齢者に人気のコンパクトカーには搭載されていないことが多く、また運転支援システムに
多用されている画面や音による警告は、高齢者には有効でない場合があります。この団体では、各自動車メーカーと共同し、
ドライブレコーダー付の車で高齢者の運転の特徴を細かく分析、1万人のアンケートも行い、運転機能のみならず、クルマの
大きさ、価格帯など、よりシニアの現実にそった提案をしています。
運転歴が長いドライバーでも、年とともに運転がおっくうになり、また、本人が気づかないうちに運転能力がおちている
場合があります。いつまでも運転を楽しめる、ぶつからない、ストレスフリーな車はシニアドライバーにとって夢の実現です。
2015年10月17日
シニアにやさしいクルマ
主任研究員 島田 ひとみ