先般開催されたメディア・ユニバーサル・デザイン(MUD)協会「伝えるためのユニバーサルデザインフェア」のセミナーに、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDO副理事 伊賀 公一氏が登壇し、「『配慮』か『対応』か? 人の多様な色覚に対応したカラーユニバーサルデザインの濃い話」をテーマに講演しました。 ちなみに「カラーユニバーサルデザイン」とは、「NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構」が作った名称で、色の見え方が一般と異なる人にも情報がきちんと伝わるよう、色使いに配慮したユニバーサルデザインのことです。自身も色弱という氏の、「誰もが自分の色の見え方に誇りを持てる社会にしたい」との思いが伝わる、題名通りの中身の濃いお話でした。
まず「色弱」の定義から。「色弱」とは、「色弱者」の持つ視覚特性を意味し、「色弱者」とは色に配慮されていない社会における弱者という意味合いの言葉と言明。眼科では「色覚異常」と呼んでいるとのことです。2005年日本眼科学会が眼科用語集を改訂したことで、「色盲」という言葉が使われなくなり、総称として「色覚異常」という言葉が残ったといいます。
色覚異常の検査は、その起源を辿ると、1875年に起きたスウェーデンのラーゲルンダ鉄道事故に行きつくそう。信号機に赤と緑を使ったことが原因とされ、この事故後、色覚検査が始まり、日本でも大正5年に導入されます。ところが日本の場合は、欧米と異なり、一律の学校色覚検査で、戦後も長く続けられました。他人の生命・財産に絡む仕事不可などと差別され、デメリットが大きいことが判明して、廃止されたのは2002年と、ずいぶん長い年月が経ってからのことだったのです。今では希望者のみに実施されることになり、職業選択の制限も一部の警察や交通関係に残るのみ、となっています。
次に色を見分ける能力について。大きく3つの色型があり、2色型色覚は、青と緑のダブルトーンで見ている色弱者や、多くの哺乳類がこれで、色よりも形や模様を見分ける能力や暗視に優れているそう。3色型色覚は、ほとんどの人が持っている色覚で、形や模様よりも色を見ているといいます。4色型色覚は、哺乳類以外の爬虫類や鳥、昆虫などの生き物で、紫外線や赤外線の光を感知できると考えられている色覚です。
色覚で2色型の人は、日本人男性の5%、20人に1人で、白人男性は5~10%、女性は500人に1人だそう。日本では320万人、世界では2~3億人いるとのことです。治療やメガネで3色型にすることは不可能で、色覚の異常が相当数の人々の悩みの種となっていることが分かりました。
さらに色の見える眼の仕組みを図示し、色弱では、赤が暗いP型(1.5%)と、緑が暗いD型(3.5%)があることを解説。P型とD型色覚の人たちにとって、見分けられない色があり、この問題を解決する必要があると強調しました。
例えば黒の背景色に赤の文字色では、赤の字が見えないので、赤をオレンジ系の朱色に変更すると見分けられるようになります。信号機の色は、かつて赤黄緑でしたが、色弱者が見分けられるように緑を青緑に変えました。これにより色弱者も車の運転ができるようになりました。細い線は太くしたり、面積の狭いものは広くしたりすることで見やすくなります。また色の名前を使ったやりとりが分からないので、色以外の情報である文字や形をつけて配慮することなど、様々な事例を紹介しました。
最後に、カラーユニバーサルデザインのポイントを3つ挙げました。
①できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ。
②色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする。
③色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする。
色弱ではなくても、高齢者は淡い色の文字が読みにくいといいます。色の見え方は人それぞれで微妙に異なっています。そうした多様な色覚を持つ人々のための当たり前のデザインとは何か、改めて考えたいと思いました。
2023年10月19日
「カラーユニバーサルデザイン
人の多様な色覚に対応
代表理事 柳原美紗子